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告発のとき

◆"追跡者"トミー・リー・ジョーンズが知る事になる、驚愕の真実 (85点)

 トミー・リー・ジョーンズといえば追跡者。93年の『ハリソン・フォード 逃亡者』で主人公を追い詰める執念の捜査官を演じて以来、その続編的な『追跡者』(98年)では同じキャラクターで主演に昇格。その後も『ダブル・ジョパディー』(99年)、『ハンテッド』(03年)等々で同様の役柄を演じ続けた。いまや、何かを追わせたらハリウッド最強の男といっても過言ではない。

 そんな彼が今回追いかけるのは、息子殺しの真犯人。だがそのミステリ的なオープニング、設定とはうらはらに、『告発のとき』(121分/米国)が描く問題は恐ろしいほど政治的で、かつ深刻だ。

 04年11月、軍警察を引退して隠居中のハンク(トミー・リー・ジョーンズ)のもとに、イラク帰還兵の息子が行方をくらましたとの知らせが軍から入る。軍人一家で育った息子に限って敵前逃亡などあり得ないと確信するハンクは基地へ急行、単身で息子の行方を捜し始める。

 やがて息子の死体が発見され、ハンクの調査は殺人事件捜査へと姿を変える。男社会の職場で苦労を抱えるシングルマザーの刑事(シャーリーズ・セロン)の力を借り、徐々に真相に迫るが……。

 知らなきゃよかった息子の秘密、ってな経験は誰しもあろうが、こと殺しがからむとなればその深刻さは段違い。主人公が向き合う事になる真実は、軍隊を定年まで勤め上げた男の確固たる価値観をさえ、足元から揺さぶる。観客の心を巻き込みかき乱す終盤の大混乱は、ポール・ハギス監督が狙い済ました効果だろう。この監督は、今回確信的に意地悪きわまりない演出を行い、まれに見る優れた政治映画を作りあげた。

 息子殺しの犯人探しがなぜ政治映画になるのか、怪訝に思う方も多いだろうが、それは見ていただければきっとわかる。特に、原題にもあるゴリアテの逸話(エラの谷とは旧約聖書にあるゴリアテとダビデが戦った場所のこと)が劇中で語られるシーンと、2種類の星条旗に注目。

 還暦を過ぎたトミー・リー・ジョーンズが、蛇のように執念深い追跡の末に得るものとは……。これまでの"活躍"を知る映画ファンには、大いに考えさせられる結末だ。


■作品データ
告発のとき
In The Valley of Elah
2008年6月28日(土)より有楽座ほかTOHO系全国ロードショー
2007年/アメリカ/カラー/121分/配給:ムービーアイ

スタッフ
監督:ポール・ハギス
製作:ポール・ハギス、パトリック・ワックスバーガー、スティーヴ・サミュエルズ
ダーレーン・カーマニョ・ロケット、ローレンス・ベクシー
製作総指揮:スタン・ヴロドコウスキー、デヴィッド・ギャレット
エリック・フェイグ、ジェームズ・ホルト、エミリオ・ディエス・バロッソ
原案:マーク・ボール、ポール・ハギス
脚本:ポール・ハギス
撮影:ロジャー・ディーキンス
プロダクションデザイン:ローレンス・ベネット
衣装デザイン:リサ・ジェンセン
編集:ジョー・フランシス
音楽:マーク・アイシャム

キャスト
トミー・リー・ジョーンズ
シャーリーズ・セロン
スーザン・サランドン
ジョナサン・タッカー
ジェームズ・フランコ
フランシス・フィッシャー
ジョシュ・ブローリン
ジェイソン・パトリック




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