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シークレット・サンシャイン

◆ (75点)

 一昔前に話題になったヨン様狂奏曲のインパクトが強すぎたため、「韓流ドラマ=オバサンの妄想消化装置」のイメージが日本では定着してしまった。だがしかし、韓国映画に大人の男の鑑賞に耐える作品が無いわけではもちろんない。メロドラマばかり輸入していたあの韓流ブームのころでさえ、素晴らしい人間ドラマは存在したのだ。数本だけだが……。

 その数少ないひとつが2002年公開の『オアシス』。脳性マヒの女性とレイプ服役犯の恋という前代未聞の強烈な内容で、人の心の深淵に迫る入魂の作品だった。私は今でもこれをここ数年のベスト・オブ・コリアン・ムービーと思っている。

 その監督イ・チャンドンは、『オアシス』発表後、政府から任命された文化観光部長官の職を昨年まで務めた。そして映画界復帰後最新作としてこの『シークレット・サンシャイン』を作った。こいつは見逃せないだろう。

 若きシングルマザー、シネ(チョン・ドヨン)は、亡き夫の故郷で再出発をはかろうとソウルを発った。その旅の途中で故障した車を直してくれた中年男ジョンチャン(ソン・ガンホ)は、垢抜けた彼女に一目ぼれしたようで、引越し後も何かと世話を焼いてくる。そんなこんなで新生活をはじめたシネに、やがて息子の誘拐事件という試練が襲い掛かる。

 この映画には、苛烈きわまる運命に翻弄されるヒロインの、想像を超える困難な生き様が描かれている。見知らぬ田舎町に越して間もなく、ただ一つの宝物を奪われた女の行く末は悲惨だ。頼る者など一人もおらず、孤独に切り裂かれてズタボロに壊れていく姿はあまりに痛々しい。イ・チャンドン監督の容赦ないストーリーテリングに、観客の心も重くなる。

 そんな彼女の半歩後ろを、なんの報いもないままに歩いていく男がいる。田舎者のおせっかいをうざったいと思うシネは、決してジョンチャンを振り返る事はない。だがそれでも彼はひとり、彼女を見守り続ける。

 この奇抜なラブストーリーは、タイトルの持つ真の意味がわかるラストシーンで静かな、しかし深い感動を与えて幕切れとなる。感情を揺さぶる良質なドラマの誕生といえるだろう。


■作品データ
シークレット・サンシャイン
Secret Sunshine
2008年6月7日(土)シネマート六本木ほか、全国順次公開
2007年/韓国/カラー/142分/配給:エスピーオー

スタッフ
原作:イ・チョンジュン「虫の物語」
脚本・監督:イ・チャンドン
撮影:チョ・ヨンギュ
照明:チュ・インシク

キャスト
チョン・ドヨン
ソン・ガンホ
チョ・ヨンジン
キム・ヨンジェ
ソン・ジョンヨプ
ソン・ミリム
キム・ミヒャン




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