トップページ激映画批評

激映画批評

バックナンバー


ミスト

◆スティーブン・キングの原作を変更、凌駕した大傑作 (90点)

 子供が出来るということは男性にとっても大きな喜びと思うが、危機管理の観点からすれば克服できない弱点を抱えこむという側面もある。誘拐・事故の類の心配から家庭内勢力図の激変(嫁軍の戦力増加)等々、懸念の種は尽きないが『ミスト』(米/125分)を見るとよりその思いを強くするだろう。

 ジャンルはホラー風味のオカルトドラマとでもいったもので、原作は人気作家のスティーヴン・キング『霧』。超常現象モノで知られる原作者だが、監督が名手フランク・ダラボンだからオカルト嫌いのアナタでも大丈夫。この人が監督したキング作品には『グリーンマイル』(1999)、『ショーシャンクの空に』(1994)があるよといえば、納得していただけよう。

 主人公は30代か40代と思しき普通のお父さん。まだ幼い息子とともに町一番のスーパー(小規模なホームセンターといった感じ)にやってくる。昨夜の激しい台風が過ぎた後とあってか、お客も多い。小さな町だからみな顔見知りだ。そんな時、突如発生した深い霧に店は一瞬で覆われる。

 霧をモチーフにしたホラードラマはジョン・カーペンター監督『ザ・フォッグ』(80年/米)などいくつかあるが、本作の際立つ特徴は、怖いのが「霧」じたいでなくその恐怖によってパニックに陥る人間たちというところ。「霧の中のなにか」により犠牲者が続出すると、店内の人々の心に疑心暗鬼が蔓延し、激しい対立が始まる。信頼や協調の精神は徐々に失われ、長年の隣人に対して平気で暴力を振るう輩が現れる。

 屈強な主人公は、しかしかけがえのない息子という大きな弱点を抱え、どうこの修羅場を切り抜けるのか。

 観客の希望はひとつ、またひとつと奪われてゆき、もっとも大切な存在を失う恐怖が徐々に増大していく。この順を追った丁寧な演出は凶悪なまでに的確で、悔しいほどの説得力と諦念を観客の心に生じさせ、激しい混乱に陥れる。

 原作読者にさえ予測のつかぬオリジナル結末の衝撃は、映画史上に残るといって良い。間違ってもお子様を連れて行かぬよう。


■作品データ
ミスト
THE MIST
2008年5月10日(土)より、有楽町スバル座ほか全国ロードショー
2007年/アメリカ/カラー/125分/配給:ブロードメディア・スタジオ

スタッフ
監督・脚本:フランク・ダラボン
原作:スティーヴン・キング

キャスト
トーマス・ジェーン
マーシャ・ゲイ・ハーデン
ローリー・ホールデン
アンドレ・ブラウアー
トビー・ジョーンズz2008
ネイサン・ギャンブル




ページの先頭へ戻る