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勇者たちの戦場

◆イラク帰還兵が、米本土で直面する地獄の日々 (75点)

 アメリカの帰還兵の中には心を病む人が多いなんてニュースを、ここ日本でもたまに見聞きする。年がら年中戦争をやっているあの国でさえ、戦場で人を殺してきた兵士らを見る市民の目は冷たい。彼らの犯罪率の高さに起因する、不当な差別も多いという。

 祖国のため、命がけで任務を果たした英雄となるはずだった彼らに、いったい何がおきているのか。『勇者たちの戦場』(105分/米国)は、彼らの内面と、彼らを取り巻く外側の人々の実態に迫る社会派の劇映画だ。

 戦後処理中の現在のイラク。帰国前、最後となる輸送任務中、軍医マーシャル(サミュエル・L・ジャクソン)や女性兵士バネッサ(ジェシカ・ビール)らの車列が敵ゲリラ兵に襲撃される。混乱の中、仲間は一人また一人と倒れ、焦った若い兵士は誤って現地の民間人女性を撃ち殺し、バネッサも片手を吹き飛ばされてしまう。多大なダメージを追いつつなんとか逃げ伸びるも、帰国後、彼らには別の悪夢が待っていた。

 消えない罪悪感やPTSD、困難な社会復帰、疎外感、喪失感、激しい差別……。引きこもる者、酒や薬に逃げる者、再び戦場へ向かう者、そして犯罪に走る者。この映画では、帰還兵たちの様々な運命が描かれる。

 親友、片腕、家族との関係等々、失ったものの大きさを、彼らはアメリカ本土で痛烈に感じることになる。皆生きることに真摯だった戦場と、平和ボケの祖国の様子のギャップの大きさに、どうしても慣れることができぬ兵士たちの姿が痛々しい。

 愛する妻や子供たちさえ、いまや"違う世界の人"。救いにはならないこの絶望。中でも片腕をなくした若き美人兵士が、最愛の彼氏の慰めすら受け入れられず猛烈に拒否する一方、初対面の軍人に心を開き、悩みを告白する場面は衝撃的。兵士と民間人の間の、壁の高さを痛感させられる名場面だ。

 「それが戦争さ」と、知った風に言えない重々しさが本作にはある。現在進行中の題材そのものの鮮度に負けない、ロケ中心のリアリティある画面づくりもまた良い。あえて有名スターを起用し、劇映画で作ったのは、大勢の人々に問題提起したいとの意思だろう。現代アメリカを知るための、必見の傑作だ。

■作品データ
『勇者たちの戦場』
Home of the Brave
2008年1月5日より銀座シネパトス他、全国ロードショー
2006年/アメリカ/カラー/105分/配給:日活

スタッフ
監督:アーウィン・ウィンクラー

キャスト
サミュエル・L・ジャクソン
ジャシカ・ビール
カーティス・ジャクソン
クリスティーナ・リッチ




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