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キングダム / 見えざる敵

◆気軽な大作映画の中に真実をこめた必見作 (75点)

 ケータイでも見られるほどテレビが普及した結果、すっかり死語になってしまったが、かつてお茶の間では"チャンネル争い"と言って、父と娘、妻らがリモコン覇権を競っていた。そして今では休日のシネコンにおいて、どの映画をみるかで類似の戦いが繰り広げられている。

 そんなとき、我々男軍と強敵女子供連合の対立軸となるのは、国際政治、社会派、軍事の3ジャンル。やつらは映画の中にこのうちひとつでも見受けられると、猛烈な拒否反応を示す。そして『キングダム/見えざる敵』(110分/米国)には、そのすべてが含まれている。だがコレ、一人で見るにはもったいない佳作だから、今回は心して家族を説得していただきたい。

 舞台は現代のサウジアラビア。中東におけるアメリカの重要なパートナーでありながら、これまで米国映画でほとんど描かれた事のない、謎めいた絶対君主制国家だ。実際、この地域はハリウッドにとって魅力的な"未開の地"らしく、2007年以降、何本かの関連作品の公開が予定されている。

 本作は、首都リヤドの外国人居住区を狙った自爆テロを、FBIの精鋭4名が捜査するサスペンスアクション。滞在可能なのはわずか5日間という時間制限と、政治的な捜査妨害の中、命がけで真相にせまるプロたちの息詰まるドラマだ。

 中東ロケによる本物映像や、リアル志向の銃撃戦は大きな見所。かの国の意外なまでの反米気質や、宗教、文化の違いなども、徹底したリサーチでよく描かれている。

 多くの人が報道でしか知りえない9.11後の中東情勢。この作品は、それだけでは伝わりにくい実際の現場の空気感を垣間見せてくれる。アクションが適度に挟まれるから、この手の社会派が苦手な人でも大丈夫。その上、テロリズムの本質を突いた皮肉なラストはオトナの観客をも満足させてくれる。

 邦画のテレビドラマ映画なんぞ放っておいて、次の週末はぜひこの良作を見に行ってほしい。私は読者諸氏が、シネコンにおけるチャンネル争いにおいて、無事勝利を収めることを強く祈っている。

■作品データ
『キングダム / 見えざる敵』
The Kingdom
2007年10月13日 全国東宝系にて一斉ロードショー
2007年 ユニバーサル映画/上映時間110分/シネマスコープサイズ/配給:UIP映画

スタッフ
監督/ピーター・バーグ
脚本/マシュー・マイケル・カーナハン
製作/マイケル・マン
スコット・ステューバー
製作総指揮/マリー・ペアレント
スティーヴン・シータ
サラ・オーブリー
ジョン・キャメロン
撮影/マウロ・フィオーレ、ASC
プロダクション・デザイン/トム・ダフィールド
編集/ゲウィン・ステットACE
コルビー・パーカー・Jr.
衣装デザイン/スーザン・マシスン
音楽/ダニー・エルフマン

キャスト
ロナルド・フルーリーFBI捜査官/ジェイミー・フォックス
ジャネット・メイズFBI捜査官/クリス・クーパー
グランド・サイクスFBI捜査官/ジェニファー・ガーナー
アダム・レビットFBI捜査官/ジェイソン・ベイトマン
デーモン・シュミット アメリカ大使館首席公使/ジェレミー・ピヴェン
ギデオン・ヤング 司法長官/ダニー・ヒューストン
ロバート・グレース FBI長官/リチャード・ジェンキンス



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