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ブラッド

◆擬似父娘関係がせつないホラードラマ (65点)

 男が楽しめる映画とは、はたしてどんなものなのか。夏休みだからと一日ヒマしてる女房子供と違って仕事で疲れた頭には、ゲージュツ的な文芸作品はちとキツい。かといってノーテンキな恋愛ドラマもごめんだ。

 ここはやはり、綺麗なお姉ちゃんがヒロインのお気楽吸血鬼アクションあたりがいいんじゃあるまいか。ホラー映画は納涼になるし、なにより『ブラッド』の主演ルーシー・リューは日本人にも親しみやすい、小柄なアジア系のかわいい女の子だ。おまけにワルの吸血鬼にイジメられ、全裸で逆さ吊りなんていう嬉しい、いや可哀想なシーンも体当たりで熱演している。まさに手放しで応援したくなるではないか。

 彼女が演じるのは有能な事件記者。ところがアブナイ新興宗教団体の取材中、敵に拉致され殺されてしまう。……が、ある理由により死体安置所で目覚め、吸血鬼としてよみがえる。そして自分を殺したカルト団体に対し、復讐を始めるのだ。

 子供だましのニンニク十字架といった古臭い設定はナシ、あくまで現代劇として、最低限のリアリティを損なわぬつくりになっている。生きるために罪なき人を殺め、生き血を摂取せねばならぬ罪悪感に心をズタボロにされながらも、不死体質のため自殺すらできないヒロインの苦悩が見ていて痛ましい。

 やがてその唯一の理解者となるベテラン刑事は、実の娘をこの団体に殺された恨みから、署内で孤立するほどの強引な捜査を行っている中年男。同情は受けるが理解はされない孤独なもの同士の、悲壮な戦いが胸を打つ。このオヤジが実に人間くさい味を出しており、私たちオトコの観客の共感を集める。

 二人の人間ドラマが軸で、アクションは脇役程度。隠し味はルーシーのスレンダーヌードというわけで、これはなかなか大人の鑑賞に堪える掘り出し物の一品。残業あとにビールでも飲みながら、涼しい劇場で楽しむのにピッタリだ。

■作品データ
『ブラッド』
Rise: Blood Hunter
2007年8月11日、シアターN渋谷ほかにて公開
2007年/アメリカ/カラー/98分/R-15/配給:リベロ

スタッフ
監督・脚本:セバスチャン・グティエレス

キャスト
ルーシー・リュー
マイケル・チクリス



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