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ブリッジ

◆映画史上有数の問題作 (85点)

 自殺者が減らない。毎年多少の増減はあれど、警察庁の発表によれば日本国内の自殺者は9年連続で3万人を突破。ほとんど戦争中の戦死者数のごとき様相を呈している。疑惑の渦中にいた大臣や、かつて成功を収めたアイドル歌手など最近はセンセーショナルなケースが多いが、統計を見れば「勤務問題」という、サラリーマンには他人事とは思えぬ動機が相変わらず大きな比重を占めている。

 そんな中公開される『ブリッジ』(93分 米国)は、自殺をテーマにしたドキュメンタリー。……とはいえ、私はそれと知らずに見たものだから、いまだにプチトラウマ状態だ。いや、たとえ知っていたとしても本作が大ショッキング映画であることに違いはない。

 内容は、自殺者の遺族や友人など関係者のインタビューを通じ、なぜその人物が死なねばならなかったのか、残されたものの想いはどうなのかを淡々と描くもの。具体的には、7名のケースを併行して追いかけている。まあ、これだけなら誰もが思いつく平凡な手法と感じるのではないかと思う。

 むろん、それで終わるような作品であれば、選りすぐりの作品のみ掲載するこの欄でわざわざ紹介などしない。『ブリッジ』最大の特徴は、「7人のにんげんが自ら命を断つ瞬間を、カメラに収めて見せてしまう」というところだ。

 いったいなぜそんな事ができたのか。もちろん偶然ではない

  アメリカ西海岸に、ゴールデンゲートブリッジという、アールデコ調のデザインが美しい巨大な吊り橋がある。ここは観光名所であるとともに、飛び降り自殺の名所でもある。映画のスタッフはこの橋を臨む4箇所にカメラを設置し、なんと1年間定点観測を行った。

 すでに1200名が命を捨てたこの場所のこと、案の定大勢の人々がカメラの前で飛び降りた。不審者を見かけた時点でスタッフは通報するようにしたが、間に合わぬケースもあった。その決定的瞬間が、映画撮影用の立派な機材による鮮明映像で公開される。

 そのショックたるや、想像以上のものがある。平和なこの国では"理不尽な死"に出会うことは少ないが、それでも私たちは年間3万人が同じように死んでいく事をすでに知っている。そんな今日、この映画を正視する勇気のある人が、はたしてどれだけいるのだろうか。

■作品データ
『ブリッジ』
THE BRIDGE
2007年6月16日より恵比寿ガーデンシネマ他にてロードショー
2006年/アメリカ/93分/カラー/ビスタ/配給:トルネード・フィルム

スタッフ
監督・プロデューサー:エリック・スティール「アンジェラの灰」
配給:トルネード・フィルム



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