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パラダイス・ナウ

◆テロリスト最後の一日 (70点)

 男なら誰でも、いつか人生をかけた一発勝負をしてやろうという気概のひとつくらい持っている。しかしその勝負とやらが、爆弾かかえた自爆テロとなったらどうだろう。勝っても負けても本当に一発で人生終了じゃ、正直たまらない。
  本作は、そんな勝負をするハメになったパレスチナ人の男二人の心境を描く人間ドラマ。「テロリストを正当化している」との理由で被害者から反対の署名運動がまきおこったが、その質の高さから本年度のアカデミー外国語映画賞にノミネートされた話題作だ。
  舞台はイスラエル占領地ナブルス。二人の若者は自動車修理工としてつつましく暮らしているが、ある日所属するパレスチナ抵抗組織のリーダーから、名誉ある自爆攻撃の実行者に選ばれる。
  親友同士ということで二人そろって選ばれるという、あんまりありがたくないリーダーの温情により、彼らは二日後に自爆することに。ご馳走を振舞われ、新品のスーツを支給され、犯行声明のビデオを撮影。パレスチナ人監督が徹底取材して描く「テロリストは最後の一日をどう過ごすのか」は、見ていると胃が痛くなる。
  興味深いのは、決して彼らが耐えられないほど窮乏しているわけでも、確固たる宗教思想を持っているわけでもないのに、いつの間にやら命がけの作戦を遂行してしまう点。貧しいながらも仕事の合間に水パイプを楽しみ、女の子と楽しく語り合う二人の暮らしに、自爆してまで抵抗する理由は一見見当たらない。
  まさに、矛盾だらけの行動原理。だいたい市内での爆破作戦自体、彼らと同じ"被害者"を拡大再生産するだけではないか。そして、そんな主人公を最後まで止めようとするのは、英雄であるはずのかつての殉教者(自爆テロ実行者のことだ)の娘。矛盾に矛盾が重なるこの映画の構造は、中東の抱える問題の本質をズバリついている。
  撮影はギリギリまで現地で行われ、ロケ地で3人の死者が出てようやく撤収を決めたという。まさに、男の人生をかけた仕事ぶりというほかはない。

■作品データ
『パラダイス・ナウ』
2007年3月10日より、東京写真美術館にて公開!
2005年/仏・独・蘭・パレスチナ/90分/35mm/カラー/配給:アップリンク



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