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幸せのちから

◆結末を知ってると面白さ半減 (85点)

 我々フリーライターは、生活の保証がない不安定な身分という点でフリーターと同じ。字面通り、両者はライの有る無し程度の差しかない。隅田川沿いに青いテントを建てている皆さんを見るたび、明日はわが身と胃が痛くなる商売なのである。

 「幸せのちから」(06年、米)の主人公(ウィル・スミス)も、同じく生活の保証がない全歩合制、代理店扱いの営業マン。しかも商品は骨密度測定機などという、どう見ても売れそうに無い代物だ。月2台のノルマがこなせぬまま月末を迎えるその心境は、想像するに余りある。

 真面目で努力家なのに報われない、まさに格差社会の被害者たる彼に、やがて離婚という試練まで訪れる。突然一人で5歳の息子の世話をせねばならぬ状況に陥り、家賃さえ払えなくなった彼らは、ついにホームレス生活へと転落する。

 あてどなくさまよい、初めて駅のトイレで夜を明かすシーンが圧巻。床のタイルから伝わる寒さに震え、無邪気に眠る息子をただただ抱きしめる父親の無力感。その絶望的な表情を見事に演じたウィル・スミスは、本作でゴールデン・グローブ賞にもノミネートされた。ちなみに息子役ジェイデン・クリストファー・サイア・スミスとは実際の親子。オーディションで選んだとの公式発表を聞いたときは眉唾であったが、なかなかどうして素晴らしい子役ぶり。どん底生活の中でも、愛する父に純粋な笑顔を見せる姿に何度も泣かされた。

 ラストシーンで「えっ、もう2時間たったの?」と感じるほど没頭した映画は私としても久しぶり。おまけにその終わり方も絶妙。実はこれ、米国では有名な実話の映画化で、底辺まで落ちた父親のその後の奮闘ぶり、そして結末が最大の見所。はたして彼らはどこまでのし上がるのか?!

 それにしても、主人公が出世街道を駆け上る展開より、あれよあれよと転落していく話にリアリティと共感を感じてしまうわが身が悲しい。

■作品データ No.002
『幸せのちから』
2007年1月27日(土)より スカラ座ほか全国東宝洋画系にてロードショー
2006年/アメリカ/カラー/120分/配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント



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