トップページ激映画批評

激映画批評

バックナンバー


鉄コン筋クリート

◆難しい原作を違和感なくアニメ化した (75点)

 アニメーションは絵が動くもの。……というと当たり前に聞こえるが、「絵が動く」こと自体を純粋に楽しませてくれる作品は意外に少ない。米国産の3D-CGアニメには温かみが薄いし、宮崎作品はどちらかというと背景美術の美しさが印象に残る。

 そこへいくと、日本の制作会社"STUDIO4℃"が送り出す作品は、例外なく「動き」を堪能できるものばかり。『アニマトリックス』(03年)や『MIND GAME』(04年)などは「見た瞬間誰にでも凄さがわかる」典型のような作品で、世界的にも高く評価されている。欧州で20世紀末から巻き起こった日本アニメブームは、彼らの作品によるところが大きい。

 その最新作『鉄コン筋クリート』は、漫画家松本大洋の代表作のアニメ化で、原作を崇拝するマイケル・アリアス監督が7年越しの執念を実らせた入魂の一本。昭和の香り漂う架空の町"宝町"で活躍する二人の孤児の物語だ。

 この主人公、子供ながらクールでたくましく、超人的な運動能力を誇る。彼が路地裏から屋根上まで、宝町を立体的に飛び回るアクションが最大の見所だ。実写映画を参考にした手持ちカメラ風の構図など、アニメ映画お定まりのパターンを打ち破る新鮮な動きが満載で、観客を楽しませる。

 中でも、わざわざ宝町の立体地図をつくり、時刻と場所により太陽光の角度を計算して人物に影をつけるなどした「光の演出」のこだわりは相当なもの。それに、路地に転がる空き缶の汚れまで再現した細微な描写が加わり、どのショットを切り取っても部屋に飾れるんじゃないかと思うくらい、魅力的な絵に仕上がっている。

 激しい暴力描写など、対象年齢層から子供は切り捨てられているから大人同士で鑑賞すべき。

 話の展開は少々グダグダしているが、映像のパワーに圧倒され、111分間の上映終了後にはぐったりと疲れてしまうほど。万人向けではないが、その品質はまぎれもなく世界レベルだ。

■作品データ No.001
『鉄コン筋クリート』
2006年12月23日(祝)、渋谷東急ほか全国松竹・東急系にて感動のロードショー!
2006年/日本/カラー/111分/配給:アスミック・エース



ページの先頭へ戻る